
心臓ドックで異常が発見されたら
日進月歩の治療法
心臓ドックの検査で最も多く検出された不整脈から解説してみましょう。
不整脈と一口にいっても、危険なものもあり、放置しても全く心配のないものもあります。一般的には、心室から起こる心室性不整脈はときにより危険を伴うことがあるのです。特に、心室性期外収縮が3個以上連続して起こると、心室頻拍といいときに心室細動に移行して死に至ることがあります。また、心室性期外収縮が心電図のT波に重なると同じように心室細動に陥ります。これを「RonT(アールオンティ)」現象と呼んでおります。
これらの危険な不整脈に対しては薬剤治療が効きますが、不十分な場合には、カテーテル焼灼術により治療ができます。心室細動を繰り返すような症例には、植え込み型の心室除細動装置も開発されています。
一方、心房から生ずる上室性不整脈は、上室性期外収縮ということが多く、危険度が低いといえます。
しかし、洞機能不全や完全房室ブロックなどの徐脈性の不整脈は、失神発作の原因となるために心臓ペースメーカーの植え込み手術が必要です。
心房細動という不整脈は、脈が不整で早くなったり、遅くなったりします。心臓のポンプ出力も20%低下します。このため、ジキクリスなどの強心・抗不整脈剤とともに左房内血栓の予防に抗血小板凝集抑制剤を用いて、脳塞栓症の予防にも努めることとなります。
WPW症候群では、いったん心室へ伝えられた刺激が先天性に存在するケント束を逆行性に伝わり、再び心室へと刺激が伝達されるため、刺激がぐるぐると回る回路が形成されます。したがって、心室性の頻拍が起こり、低血圧や生命の危険を引き起こすことになりかねません。薬物治療が無効の場合には、外科的にケント束を切断するか、カテーテル焼灼術により治療を行うことができます。
虚血性心疾患の治療の原則
次に虚血性心疾患です。これは冠状動脈の病気で、コレステロールのために血管が詰まり、血流の流れが悪くなるか、スパスムといわれる攣縮により一時的に血流障害が起きるために、心筋に酸欠状態が生ずるものです。症状がある狭心症でも、症状を感じない無痛性心筋虚血でも、治療の原則は次のようになります。
① リスクファクター(危険因子)の除去。
② 冠拡張剤、抗血小根凝集抑制剤の投与。
③ 心臓カテーテル検査(冠状動脈造影)による冠状動脈の病変部位と程度の確認。
④ 治療法の再評価と選択。
もし、心臓カテーテル検査により、冠状動脈の狭窄が75%を超えていることが判明した場合には、狭窄をなんとか解除しなければなりません。
最近、この治療法が非常に進歩して、胸を切開せずに治すことが可能になりました。その代表的治療法が、風船による血管拡張術(PTCA)です。これは大腿の付け根の動脈から、バルーン内蔵型のカテーテルを狭くなつている血管内へと進め、風船をふくらませることによって、狭窄部分を拡張する方法です。
現在、この治療法の成功率は95%に達しております。更に、血管内のコレステロールを削り取るアテレクトミー(DCA)という方法も臨床応用の段階に入っております。また、血管内にステント(中空管)を留置する方法も考案されています。しかし、病変が複雑で多岐にわたる場合には、バイパス手術による治療が行われます。いずれにしても、治療時期の決定が重要となります。
次に心臓弁膜症です。薬剤による心機能の保全が第一義的な治療となります。病変で冒された弁に対しては、血栓がつかぬように抗凝固剤を、また細菌性心内膜炎の予防に、歯科の治療などの前に抗生物質を投与します。
壊れた弁を人工弁と交換する人工弁置換術も、最後の治療法として残されています。
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